株式投資

いま原油ETFを買うべきか? 潜在リスクを解説します

先日、4/21(火)原油先物価格(5限月)が史上初マイナス価格を記録しました。

先物市場は言わば上級者向けで、初心者投資家が成功するのは、なかなか難しいです。

ですが、原油ETFであれば商品別に簡単に分散投資できます。

今回は原油安に乗じて「原油ETFを買うべきか」について詳しく解説していきます。

投資は情報戦なので、この記事で少しでも投資の参考になれば幸いです。

 

これまでの原油価格の推移を解説

まず、マクロ的目線で原油価格の推移について解説します。

下図は2000年〜2020年までの原油価格の推移です。

原油価格の推移を解説

  • 2000年〜2008年:戦争による需要の高まりに伴い、原油価格が上昇
    2001年9月11日 アメリカ同時多発テロからイラクとアメリカの戦争が激化し、2003年にイラク戦争が勃発
    イラク戦争は長期化、さらにインフレによる原油市場の拡大も重なって、原油価格は一時1バレル=140ドルまで高騰
  • 2008年〜2010年:リーマンショックにより、原油価格が大暴落
    2008年9月リーマンショックを契機に、世界同時不況
    リスク回避のため、株式市場と同様に原油市場からも資金が流出し(売りが殺到)、市場規模が縮小
  • 2010年〜2014年:リーマンショックからの回復とシェール企業の台頭
    不況から一転、景気回復とともに原油市場にも資金流入があり、原油価格も上昇
    アメリカのシェール革命とともに、この期間にシェールオイル企業が増え、世界的に原油生産量が増加シェールオイル生産量の推移
  • 2014〜2016年:世界に原油が溢れ、原油価格が暴落
    ついに原油供給量が需要を上回り、原油価格は一時30ドルまで下落
  • 2016〜2018年:OPECプラスの協調減産と世界的景気拡大による需要増加により、原油価格が回復
    ※ OPECプラスとは「OPEC代表サウジアラビアと、非OPEC代表ロシアを含む24ヵ国」
  • 2018〜2020年:シェール企業の採掘コストである50ドル前後で推移、その後下落を開始
    シェールオイルの生産量がさらに増加。OPECプラスの減産により価格は50ドル前後で推移するが、米中貿易摩擦による世界経済の懸念から需要が低下し、価格は下落傾向に
  • 2020年〜:新型コロナウイルスの影響で、原油需要が激減し、史上最大の原油安
    新型コロナウイルスの影響で、世界的に外出帰省、都市封鎖(ロックダウン)
    世界的に工場が閉鎖され、原油需要が激減
    止まらないシェール企業の増産と、OPECプラスの協調減産の決裂により、貯蔵施設の空きがなくなるほど、世界的に原油が飽和

 

アメリカのシェール企業は原油価格に関係なく、2000年代からずっと増産を続けています。

もう少しOPECプラスの協調減産に付き合ってくれたら、原油価格は安定するのにと思いますが、シェール企業も自転車操業で減産の余裕がないのだと思います。

 

直近の出来事を整理

2020年3月上旬〜4月の出来事

サウジ
原油価格やばくない?ロシアさん一緒に減産しましょうよ
減産してもアメリカは作り続けるじゃん?むり
ロシア
サウジ
お願い、もう一回話し合おうよ
むり
ロシア
サウジ
は?もう知らん。わし増産するぜよ
アメリカ
なんか騒がしいな、増産増産

原油価格20ドルまで暴落

そして、貯蔵施設に空きがなくなるまで原油が飽和し、 原油先物マイナス価格へ・・・

原油ETF投資の潜在リスクと最悪のシナリオ

それでは本題、原油ETFは今が買い時なのでしょうか。

原油ETFは、普通の株式と同じように投資ができ、日々値を下げています。

確かに、史上最大級の安値であることは間違いありません。

リスクを考えてみましょう。

 

原油ETFの潜在リスク

① ETFの上場廃止リスク

ニューヨーク証券取引所のETFのひとつである、USOは原油先物のマイナス価格を受けて、上場廃止が示唆されています。

USOは本来、直近の原油先物価格に連動するETFで、マイナスになるようには設計されていません。

通常、USO運用会社は、原油先物の売買を行って価格連動させていますが、先行きの不透明さから原油先物の新規買入を停止しました。

また、ETFの内容を直近の原油先物ではなく、7、8、9限月と一部先の原油先物に分散しました。

そのため、USOと原油先物価格にさらに乖離が発生し、通常価格連動するように設計されているETFとしての価値を失っています。

上記理由により、SEC(米国証券取引委員会)が廃止を促す指摘をするのではないかと不安視されています。

 

<ETF上場廃止になる場合のステップを知ろう>

  1. まず、上場廃止の可能性が出ると「監理銘柄」に登録される
  2. 上場廃止が決定すると「整理銘柄」に登録される
  3. その後、最終的な基準価格で繰上償還される

基本的に、監理銘柄になると価格は下がる一方なので、整理銘柄になる前に売却をお勧めします。

現時点で、日本の原油ETFは監理銘柄に登録されている物はありませんが、注意をしなければいけません。

 

② コンタンゴによる長期保有のデメリット

コンタンゴとは、原油などの先物商品の取引で、期近よりも期先価格の値段が高い状態をいいます。

つまり、「原油先物価格(5限月)<原油先物価格(6限月)」となっている状態=コンタンゴです

通常、先物市場はコンタンゴの状態であることが多く、詳しい説明は省きますが、

コンタンゴは長期保有によって、資産が目減りしていく性質を持っています。

つまり、原油ETFに関しても、その中身は先物商品を扱っているわけですから、長期保有は不利と言えます。

したがって、長期保有によって原油先物価格が2倍となったとしても、コンタンゴで対象のETFも2倍になるとは限りません。

毎月コンタンゴによる目減りがあるので、投資時期を見極めて、短期トレードをお勧めします。

 

まとめ

  1.  これまでの原油価格の推移を振り返ると、買い相場はココ
    ・OPECプラスあるいはアメリカが大規模な協調減産を表明したとき
    ・世界で戦争が勃発したとき
    ・倒産するシェール企業が増え、原油供給量が減るとき
    ・コロナウイルスが鎮静化し、社会活動が増え、原油需要が見込まれるとき
  2.  原油ETFの買い相場を見極めよう、以下に注意するべし
    ・ETFの上場廃止に注意、監理銘柄に登録されてないか調べよう
    ・初心者の人は知らないコンタンゴ、原油ETFの長期保有は損である

 

以上、今回はこれまでの原油価格の推移を振り返り、どういった時に原油が価格変動するのかを解説しました。

また、原油ETFは通常株式と異なる性質があり、そのリスクをご理解頂けたと思います。

あくまで投資は自己責任ですが、皆様のお役に立てれば幸いです。今後もどうぞよろしくお願いいたします。

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